アイドルLovers(18禁)


第二十一章 ラバーズナイト

 一頻り抱擁を交わしたあと。
 悠斗は、芳樹を両腕で抱き上げて寝室へ運んだ。
 恥ずかしいからおろしてと頼んだが、悠斗は聞く耳を持たなかった。
 芳樹をゆっくりとベッドへおろして、悠斗はにっと笑った。
「疲れてるだろうから、今日だけは、一人で寝かせてやるよ」
 ちゅっと音を立てて、芳樹の唇にキスをすると、悠斗は寝室を出て行こうとする。
 ソファーで寝るつもりなのかもしれない。
 芳樹は慌ててベッドの上で半身を起し、悠斗の服の裾を掴んだ。
 悠斗が振り返る。
「何だよ、また一人になりたくないとか?」
 悠斗の口調はからかい交じりだ。
 芳樹はそれには答えず、じっと悠斗を見つめていた。
 悠斗が芳樹の視線にたじろぎを見せた。心なしか、悠斗の耳が赤くなってきた気がする。
 芳樹は悠斗の反応に少し、勇気づけられた。
「あのさ、ユウト……」
 一度言い淀んだが、視線は悠斗から逸らさなかった。
「俺と、しよ?」
 悠斗の目と口が大きく開かれる。よほど驚いたのか、しばらく言葉が出ないようだった。
 芳樹の意図は正確に相手に伝わったようだ。
「おまえ、本気?」
 呆然とした様子で、悠斗が尋ねる。
 芳樹が頷くと、悠斗は突然両手を頭にやって、髪を掻き乱しながら、声を上げた。
「あー、もうっ! 俺がどれだけ、理性を総動員してこの部屋を出て行こうとしたのか分かるか?」
 悠斗は突然芳樹の両肩を掴んで、ベッドに押し付けた。そのまま、悠斗は芳樹を組み伏せる。
 荒い動作に、ベッドのスプリングが音を立てる。
「おまえ、今日退院したばっかだから、せっかく気を使ったのに」
 苦しそうに悠斗が顔を顰める。
 芳樹は、ふっと微笑みを浮かべた。
 芳樹を見下ろす悠斗の顔に、そっと手を伸ばして頬に触れた。
 愛しいと思った。
「ユウト、嫌なこと全部忘れさせてくれ」
 芳樹のその言葉が合図になった。



 悠斗が激しく唇を求めてくる。
 あっという間に服を脱がされ、今は互いに全裸だ。
 悠斗の唇が首筋をたどり、左手が胸の突起を摘まむ。甘いしびれが走った。
「んんっ」
 必死に唇を噛みしめていたのに、声が漏れたのは、悠斗の手が芳樹の欲望を掴んだからだ。
 強く扱かれて、芳樹は快楽の波にさらわれる。
 芳樹の体は火照って、うっすらと赤みを帯びていた。愛撫に乱れる、美しい肢体に、悠斗がどんなに魅せられているのか、芳樹には分かるはずもなかった。
 悠斗の手に、どんどんと追い上げられ、芳樹自身はもう爆発寸前だ。
 このままでは、自分だけ先にいってしまう。
「ユウト、待って、もう……」
 潤んだ瞳で、悠斗を見上げる。切れ切れに、限界を訴える。悠斗は優しげに目を細めた。
「いいぜ。先に一回いっとけよ」
 悠斗は言葉と同時に、先走りの蜜を零す芳樹自身を追い上げる。
 呆気なく、芳樹は悠斗の手の中で果てた。
 荒い呼吸を繰り返している間にも、悠斗は芳樹の体にキスの雨を降らせる。
 少し痛みを覚えるような口づけだった。
「ユウト、何?」
 悠斗の頭に手を置いて、髪に指をからませながら尋ねる。
「印をつけてるんだよ。芳樹は俺のっていう所有印」
 意味が分からなくて、問いかけようとしたが、その問いを口にする前に悠斗が行動をおこした。
 いきなり、悠斗が体を起こし、芳樹の体をうつぶせにしたのだ。
 そして、芳樹の腰を掴み、持ち上げる。
 気づくと、顔をシーツに押し付けて、尻を高く掲げるという恥ずかしい格好をさせられていた。
「何で、こんな格好」
 恥ずかしさのあまり、非難めいた声が出る。
「こうした方が、やりやすいんだよ」
「ひあっ」
 悠斗の指が、尻の狭間を撫でたあと、ゆっくりと芳樹の中に入って来る。悠斗の指がぬめり気をおびている。その正体が、自身の放ったものだと気づき、芳樹は頬をさらに紅潮させた。
 悠斗は的確に、芳樹の悦いところを刺激し、そのたびに芳樹はこらえきれない喘ぎ声を上げた。
「ああっ、ユウト」
 芳樹はシーツをギュッと掴んで、異物感に耐えた。
 辛抱強く、悠斗は芳樹の中をほぐした。
 一度放ったはずなのに、芳樹の雄は再び頭をもたげていた。
 しかし、指の刺激だけでは足りない。
 早く、悠斗が欲しかった。
「ユウト、お願い、もう」
 切なく、訴える。
「俺ももう限界」
 悠斗が答えて、芳樹の細い腰を掴んだ。
 悠斗の雄が芳樹の中に押し入ろうとした時。芳樹は悠斗に待ったをかけた。
「どうしたんだよ」
 悠斗も切羽詰まっているのだろう。声に恨みがましい響きがあった。
 自分に感じてくれているのだと思うと嬉しかったが、言いたいことがある。
「この格好のままは、嫌だ」
「でも、この方が、ヨシキにかける負担は少ないんだぞ」
 芳樹は、快感を与えられ続けて力の入らない体で、無理やり半身を起こすと、悠斗の方に向き直った。
「それでも、俺は、ユウトの顔が見られないのは嫌だ」
 羞恥心はもちろんあった。
 でも、それが芳樹の願いだったのだ。
「ヨシキ……」
 悠斗は芳樹を押し倒した。両足を大きく割り開かれ、悠斗が芳樹の秘められた場所に己を押し付ける。
 悠斗を欲している。ほぐされた中が期待に浅ましく動く。
 悠斗がゆっくりと中に入って来る。内臓を押し上げるような圧迫感が芳樹を襲う。
 芳樹は異物感に耐えながら、悠斗が全てを芳樹の中に収めるのを待った。
「全部入った」
 嬉しそうな声が、芳樹の耳をくすぐる。
「芳樹、肩につかまっとけ」
 悠斗の肩に手を乗せると、彼は腰を揺すった。刺激が体を駆け巡る。に、芳樹は身も世もなく声を上げた。
 悠斗が動きだした。
「あっ、あっ、あっ」
 悠斗の動きに合わせて声が押し出される。
 悠斗に弱い場所を抉られていくうちに、違和感はなくなり、悠斗と芳樹の体が一つに溶け合うような錯覚を覚えた。
「はあっ、ユウト、もういくっ」
 声を上げると、悠斗の口の端が上がった。ひどく男っぽい表情だった。
「俺も。一緒にいこう」
 悠斗の恋情に濡れた声。
 芳樹は最奥に、悠斗の熱を感じたと同時に、自身も熱を放った。
 悠斗の体が芳樹の上に覆いかぶさる。
 互いの荒い呼吸が室内を満たす。
 悠斗は少しだけ、体を起して、芳樹の顔を真上から見つめた。
「ヨシキ。愛してる」
 悦楽で、潤んだ瞳から涙が一筋こぼれた。
 でも、もう隠したりしない。
 芳樹は笑んだ。
 悠斗は芳樹の笑顔に魅せられ、吸い寄せられるように、キスをした。

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